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■幽幻戦国絵巻?せぶん 
2005 12 06
Tue 17:24:42

オリジナル小説  Comment 0  Trackback 0  edit.

■幽幻戦国絵巻?せぶん?【小説】
■絵巻その三【友情?そして誤解】
ここは何処までも続く海原の今にも沈みそうな小さな船の上。
いつもは鯨を追いかけて漁をする小さな漁船の船団だが、今甲板に居るのはどう見ても漁師とは思えない出で立ちの少女とそれを守るように座っている異国の男たち。
まるで仏教僧の様な身なりをしているが、日の本の僧侶とはまるで違う。
船足はそれ程速くはないが穏やかな風に包まれ帆をなびかせ進み続ける船団。
この船団は今、異国からの荷物や久しぶりに我が家へと帰る漁師たちの家族を思う気持ちを満載して徐々に日の本に近づいている。

この海の上では、日の本や世界で行われている終わりのない戦乱とは全く無関係なそんな穏やかな唯一残された平和な場所でもあった、例え陸の上では戦いが行われようと海を生活の場としている者にとってこの海は戦いとはあまり無縁でもある。

だが、それでも他人の者をかすめ取ったり、冒険を気取った海賊と称する輩が居ないわけでもない。
それでも今はこの船団には無関係である。
只、家族の待つふるさとに向けて帆をなびかせている。
小さな漁船と言っても大陸を行き来するだけの装備は勿論、船で働く者は幾度もの大風と大波を戦い抜いた強者ばかりである。
そんな船団の一つ、〔九竜丸〕と名付けられた異国の少女を乗せた船の上にもう一人の少女が乗っている。

大の大人を指図して決して大きくはないこの船を操って居る。
「おい!あまめ!風の具合はどうだ?」
この船の船長らしき男がその娘に聞いている。
「親父!大丈夫だ!あとはこの風に乗り一気に日の本さ!」
そう言う娘の答えにしわくちゃな顔を益々しわくちゃにして笑う船長。
「もうお前も立派な船乗りだな。これで安心して引退できるわ!」
そう言うとガラガラ声で大きく笑ってみせる。
「なにいってんだ!親父が大人しく引退する玉かぁ!!」
あまめと言われるこの娘、どうやらこの船の船長の娘らしい。
「こら!作治!さぼってるとこの船からたたき落とすぞ!!」
女と思えぬその言葉に作治もそそくさとどこかへ逃げていった。
「俺が目を離すとすぐこれだ!」
「そう言うなぁ、あまめ。奴らだって久しぶりのふるさとなんだから家族を思ってボーとする事もあるわな!」
そう言って娘の勇ましさに船長は高笑いを決め込んでいた。
「そういやぁ?親父!あいつら堺でおりるんだろう?」
「あぁ?なんか分けありらしいなぁ?良く知らんがな。」
「ふ?ん?、あいつらなんでわざわざこんなぼろ船に乗ったんだろうなぁ?もっと大きな船だってあったろうに。」
「おいおい!ぼろ船とはなんだぁ?俺とお前の大事な家じゃね?かぁ?」
そう言って二人は顔を見合わせ大声で笑った。

そんな船乗りたちを載せて、この船は真っ直ぐ日の本を目指して穏やかな海原を帆に風をいっぱいはらませて進んでいく。

その夜、寝静まった甲板の上に異国の少女が一人、月を眺めながら風に吹かれていた。
見張りをしていたあまめは、何となく気になり少女を見つめていた。
ずっと大人たちと一緒にこの船で生まれ育ったあまめには同年代の少女と言うのは珍しい事でもあったためか、航海を始めたときから気になっていた。
あまめはそんな少女に声をかけてみる事にした。
「おい!あんた!あんたら何処の国から来たんだぁ」
突然声をかけられた異国の少女は驚いた表情で振り返った。
「あっ!ごめん!脅かすつもりじゃなかったんだけど・・・」
照れた様に頭をかきながらあまめは少女に話しかける。
「その前にあんた!俺の言葉解るか?」
何も言わず、にっこりと笑ってこちらを向くその少女にあまめは赤くなる自分の顔を想像していた。
「異国から来たんだから話せる分けないかぁ・・」
独り言の様にあまめが言うと、異国の少女はあまめの期待を裏切るかのように日の本の言葉で話し始めた。
「私は仏教国から来た、ジュハ・ラマーナと言います。」
あまりにも自然な日の本の言葉に、あまめは少し驚いた。
「あっ!話せるんだぁ?良かったよ」
益々照れて真っ赤になる顔を想像したあまめは、照れを隠すように話し始める。
「あのさぁ?異国からこんな遠い所に来て不安じゃないか?」
あまめは必死に何か話題が無いかあたりを探しながら話を続けた。
「こっ・・こんなぼろ船に乗らなくてももっと大きな船だってあったろうになんでこの船に乗ったんだ?」
それを聞いたジュハは微笑みながら流暢な日本語で話し始めた。
「確かに不安はありますが、一人じゃありませんし、この旅にはとても大事な役目がありますから。それにあなたが立派にこの船を操っているのを見てとても安心していますよ」
あまり誉められた事が無いあまめは、益々顔が赤くなるのを感じていた。
「おっ、俺は子供の頃から親父と一緒にこの船で育ったからこの船を操る事なんか大した事じゃ無いよ。」
「いいえ。凄いと思います。私なんか寺院で育ったので、あなたの様に色んな所へ行くこともありませんでしたし、親と離ればなれで育ちましたのであなた達親子がとてもうらやましいです。」
ジュハは少しさみしそうに言った。
「そうかぁ?あんたより自由に旅を出来る俺の方が幸せなのかぁ?俺はてっきりどこか裕福な国の姫様かと思い贅沢三昧で育ったのかと思ったよ。」
そう言ってあまめは、ひとりぼっちで寺院で暮らすことを想像してみたが寺院自体ほとんど知らないあまめには想像さえ出来なかった。
「そう言えば、名前言ってなかったな、俺は・・・」
「あまめさんでしょう。」
ジュハはにっこり笑ってあまめの名を呼んだ。
「なっ、なんだ?知ってたのかぁ?」
「はい。船で働く人たちが、いつも『あまめちゃんはおっかねぇ?からなぁ?』って言ってます。」
「あっ!あいつらー!」そう言って怒るあまめを見てジュハはくすくすと笑い始めた。
そんなジュハを見て、あまめも照れながら笑って居た。
同年代の子と話す機会があまりない二人は段々と仲良くなって行った。

「それにしてもジュハはこんな遠くの日の本に何しに来たんだ?」
そう言われたジュハは少し困った様な様子を見せる。
困っているジュハを見てあまめは自分が聞いてはいけない事を聞いてしまったと少し反省した。
「いや!良いんだ!誰にだって話せないことあるもんな。」
「うううん。そうじゃないけど普通の人が聞いても理解出来ない位・・・・まともじゃない様な話だから。」
「大丈夫だよ!こうやって色んな所を旅してると、信じられない話なんて沢山あるしそれに海の上も結構不思議なことが起きるから。」
あまめの言葉にジュハは、何となく安心を覚えた。
「あまめさんも今色んな所で戦が行われていることは知ってると思うけど、その元凶がどうやら私たちが向かう日の本に有るみたいなの。それを調べて倒せるものなら倒すそれが私たちに与えられた使命なの。」
あまめはあまりの大きなそして重大な事にジュハが関わっていることに驚くと共に自分が考えたこともなかった世の中の為に同年代のジュハが絡んでいることに驚嘆するしか無かった。
「すっ、凄いなぁ?ジュハは。世の中の為に働いて居るんだぁ?戦うって事は命だって危ない事なんだろう?俺には考えられない位大変な事だよなぁ?」
「実は私にもよく分かりません。偉い方が私はその為に生まれたんだって言われ何も解らずこの旅を続けてるだけですから。」
大変な運命を抱えながら明るく話すジュハを見て、あまめは想像さえ出来ない自分を情けなく感じていた。

「それよりもあまめさんの旅の話を聞かせて貰えませんか?」
ジュハが考え込んでしまったあまめを見て話題を変えようと思った。
「うん!いっぱい面白い話、教えてあげるよ。」
今の自分がジュハに出来る事は、この航海の中楽しい気持ちにさせてあげる事だけだと思いあまめは一生懸命話してあげた。
そんな二人の少女を乗せた船は真っ直ぐに目的地へ向かって進んでいる。



「こっ、ここは・・・・」
深い眠りから覚めた咲耶は、まだおぼろげな意識の中、自分が何処に居るのか分からなかった。
だるい体を起こそうと右腕に力を入れた瞬間、激しい痛みを感じた。
「まだ動かない方がいい。」
聞いたことのない声の持ち主を捜すように、咲耶は意識を集中して声のする方へ目をやった。
「あなたは・・・」
ボーッと見つめる咲耶の傍らに、壁に寄りかかり刀を持った紫色をした髪と紫の着物を着た女が居た。胸には《凶》の文字が染め抜かれている。
「ここは何処ですか?私はどうしたのでしょう?」
まだ記憶が定かでは無い咲耶は、この紫の女に自分の疑問をぶつけてみた。
「ここか?ここは黒ヶ岳の麓、備前のはずれにある名もない村だ。」
紫の女は素っ気なく答えた。
「あっ、それから右腕の傷は一応手当はして置いた。」
あまりにも素っ気ない言葉に咲耶は、呆然と女を見つめた。
「あの、助けて頂いたのですか?」
「あぁ」
段々と咲耶はいらだちを感じ始めていた。
「そう言えば私ともう一人居たはずですが・・・」
その咲耶の言葉に、紫の女は、咲耶の隣を指さし
「その子ならそこで疲れ切って寝てるよ。大丈夫だ怪我はない。」
咲耶が振り向くと、希望がぐったりとした顔で眠っている。
心配げに希望を見る咲耶に紫の女は少し顔を上げて
「あんたその子に助けられた様なもんだよ。その子が居なけりゃ死んでいたかもな。」
咲耶はおぼろげな記憶をたぐり寄せながら考え込んでいた。
『そう言えば、死人に追われながら逃げていた私は、右腕に激痛が走りそのまま村の前で倒れ・・・ノンちゃんがかばってくれたのね』
「その子は大したもんだよ。一人であの死人五体と必死に戦って居たんだからね。」
紫の女は、少し優しい眼差しで希望を見つめていた。
その時、咲耶の声に反応したのか、希望が目を覚ました。
「さっちゃん・・・」
「ノンちゃん、ここにいるわよ。」
そう言うと希望は涙を浮かべながら話し始めた。
「さっちゃん、私、一生懸命戦ったよ。でもね・・何度倒しても倒してもあいつら起きあがってくるんだ、私・・・・」
戦って居たときの恐怖を思い出したのか、希望は泣き崩れた。
「それじゃ・・・・」
咲耶は、死人を倒したのが希望ではなく、紫の女であることに気づいた。
「あなたが倒して下さったのですね。なんと言えば・・・・」
すまなそうにする咲耶に、紫の女は大したことじゃ無いとでも言うように、
「たまたまあんたらを見つけたので加勢したまでだ。大した事じゃ無い。」
そう言い放つのを聞いた咲耶は、この紫の女の力強さを感じた。
「改めてお礼を言います。私は真宮咲耶、この子は希望、堺を目指して仲間と旅をしておりました。でも私たちをかばって・・・・」
それ以上の事は仲間を亡くした悲しみから言葉にならなかった。
「残念だが奴らと戦ってそうそう無事な奴は居ない。あきらめるんだな。」
あまりにも冷たいその言葉に、咲耶は怒りを感じた。
その表情を見て紫の女はすまなそうに、
「すまん。あまり人とは付き合いがないのでな。励ます言葉をしらん。気に障ったのなら許せ。」
そう言われた咲耶はこの女が悪気では無いことが理解できた。
「あの、よろしければお名前をお聞かせ下さい。」
「私の名は、京、当てのない旅をしている。風来坊って奴だ。」
「ふっ、」っと笑うその顔を見た咲耶は、京と言うこの女が悪い人では無いことが何となく分かった気がした。
咲耶は痛む右腕をかばい起きあがりながら自分の事を話し始めた。
「私たちは堺の港へ急がなければいけません。すぐにでも出立したいのですが・・」
お礼をしようと懐より金を取り出した咲耶を見て、
「礼などいらん。私が勝手に助けただけだ。それより一晩でも休んだ方が良い、かなり疲れてるようだしまだ傷口もふさがっては居ないからな。」
そう言われ、まだ動けぬ体と、泣きやまぬ希望の姿を見て、咲耶は京の言うとおり一晩ここで休むことを決めた。
「それにしても普通の刀では切ることも出来ない死人をどうやって倒したのですか?」
そう聞かれた京は、手に持った刀を抜きかざした。
「この刀は特別でな。気を吸い取る魔剣と呼ばれている。」
その魔剣は、おぼろげな紫の光を放ち禍々しく輝いていた。
「本当に禍々しい気を感じます。使い手を選ぶ真の魔剣ですね。」
咲耶にはその魔剣を見て、それを自由に扱う京の霊力の強さが分かった。
「あんたにはこの魔剣の事が分かるようだね。あんたもただ者じゃないと言うことだ」
「私は八雲の巫女ですから。何となく分かります。」
「あぁ?そう言うことか。」
「そんなことより、少し眠った方が良いぞ。急ぐ旅ならなおさらだ。」
そう言う京に促され、咲耶は深い眠りについた。



「おーい!陸地が見えるぞー!!」
船先に立つ余平が、遠くに見える陸地を見つけ叫んでいる。
「やっと日の本なんですね。」
ジュハが小さく見える陸地を見つめ少し安堵の様子を見せる。
「ジュハ!長い船旅がやっと終わるね。」
あまめの言葉に、ぐっと決意を新たにするジュハの姿が有った。
「あっ!ごめん!ジュハにはこれからが大変な使命が待っているだよね。」
ジュハは無言でうなずき真剣な眼差しで生まれて初めて渡る異国を凝視していた。
船はゆっくりと目的地、堺の港へと向かっていく。
段々と近づく堺の港。
船乗りたちは、久しぶりの故郷に歓喜の声を上げる。
船の姿を見つけ、港の人々も待ちわびた夫や父親、息子の姿を探し港へと集まってくる。
歓声と久しぶりの家族にさすがの海の男たちも涙にむせびながら必死に手を振る。
やがて船は、桟橋に横付けされ手際よく下船の準備をする男たちに混じって異国の一行が船との別れを惜しむかの様に身支度をする。

そんな中、ジュハは船上で生まれて初めて友と呼べる存在になっていたあまめと別れを告げるためあまめの元へやってきた。
「あまめ・・・・」
「ジュハ・・・・」
二人の間には、つかの間だが確かな友情が生まれていた。
別れを惜しみ抱き合う二人にあまめの父が声をかける。
「あまめ!おめぇ?異国から来た大事な友とこんな所で分かれても良いのか?」
「おやじ・・・」
その言葉に、あまめは決心した。
「親父!ごめん!おれ、ジュハの手助けをしてやりたい!何が出来るか分からないけど・・なんかしてやりたいんだ!」
その言葉を待っていたかのように、あまめの父は大声で怒鳴った。
「おう!行って来い!!」
そう言ってあまめの父は、初めて自分から旅立つ娘をしわくちゃな顔の笑顔で見送っていた。

あまめを加えたジュハ一行は、自分たちと合流するはずの八家衆の姿を探していた。
だが港には見あたらない。
「ジュハ、確かに港で待っている手はずになってるんだよな?」
あまめの問いにジュハはただ頷くだけ。
「そう言う感じの奴?居ないなぁ?」
あまめも色々探してみるが、それらしき一行は見あたらない。
「確か親書にはそう書かれて居たはずです。」
そう言ってジュハは親書を取り出し、あまめに見せる。
「え?と??」文字が読めないあまめには分かるはずも無かった。
すると親書には地図の様なものが書かれていることにあまめが気づく。
「あれ??これって住吉大社じゃ無いのか?」
それを聞いたジュハは地図に書かれたあまめが指さす文字を読み始めた。
「えぇ、確かに住吉大社とかいてあります。」
「じゃ、そこへ行けば何か分かるんじゃないのか?」
あまめに促されジュハとその一行は、住吉大社へと向かうことにした。
住吉大社へと向かうジュハ一行を見た沿道の人々は、奇妙な衣装に身を包む異国人を珍しそうに見ている。
だが一行には、そんな事はどうでも良かった。
待ち合わせ場所に現れぬ八家衆の手がかりを求め、住吉大社を目指し急いでいた。
何とか辿り着いた一行は、住吉大社の宮司に事の成り行きを説明し何か手がかりは無いかと訪ねるので有った。
「確かに八雲より八家衆の方々が二,三日前に到着すると連絡は御座いましたがそれ以後なんの連絡も無く、未だに来てはおりません。」
宮司の説明で一行は、これからの事を話し合っていた。
「なんでしたら、もう少しここで八家衆の方々をお待ちになってはいかがかな?」
そう勧める宮司に従い、ジュハ一行は、しばらくここで待ち様子を見ることにした。
「それにしてもおかしいですなぁ?八雲よりの連絡では、とうに着いても良さそうなものですが・・・」
その宮司の言葉を聞いて、ジュハは嫌な予感を感じていた。
「仕方有りません。明日一杯待っても来ないようでしたら、何か良からぬ事が有ったと判断して、私たちは先に目的地を目指します。」
「ジュハ、大丈夫なのか?俺たちだけで?」
「分かりません。この地へ着いてからひしひしと感じる悪しき気がどれほどのものか、私には計りかねています。ただこのままじっと待っていたのでは機を逃してしまうのでは無いかと思います。」
「しかし今までにも何度と無く、悪しき地を求めて旅立つ一行を見てきましたが未だ一組と言えど、帰った者はおらなんだと聞いております。」
宮司のその言葉でもジュハ一行の覚悟は変わらなかった。
元より、この使命の難しさ危険さは覚悟の上。
どんな事があっても使命を全うすべくこの異国の地をめざし長い旅をして来たのだから。



どのくらい眠っていたのだろうか?
咲耶は未だ痛む右腕を押さえながら目覚めた。
「さっちゃん、大丈夫?」
心配そうに覗く希望がそこにいた。
「ノンちゃん、私どのくらい寝ていたの?」
希望は咲耶の上半身を支えながら分からないという風に首を振った。
「三日三晩眠りっぱなしだ。」
聞き覚えの有る京の声だった。
「三日・・・・そんなに・・」
今から出発しても堺の港には三日はかかる・・・・そう咲耶は自分の為に大事な使命を全う出来ないのでは無いかと不安にかられた。
「すぐにでもここを出なければ・・・」
起き上がろうとする咲耶を心配そうに見つめる希望。
「私ならもう大丈夫よ。傷はともかく疲れは無いわ。」
そう言って咲耶は起き上がろうとした。
だが、三日三晩寝込んでいた体は、安定を失ってよろけてしまった。
「無理だな。その体で堺まで行くには。」
そうたしなめる京の言葉に逆らうように咲耶は荷物をまとめ始めた。
そんな咲耶の必死な姿を見て、京はあきらめたかの様に立ち上がる。
「待っていろ!どこかで馬でも探してこよう。」
そう言って京はどこかへと行ってしまった。
「さっちゃん、京ちゃんの言う通りにしようよ。」
そう言う希望の言葉に、咲耶はただうなずくだけだった。
「ノンちゃん、今あの人の事を、京ちゃんと言ったけど・・・・」
親しくなると誰でもちゃん付けで呼ぶ希望を知っているだけに咲耶は驚いた。
「京ちゃんはね。強いんだよ!あの剣であっという間にあいつら倒したんだから。それにね。話してみたら以外と優しい人だって分かって。」
そう言ってにっこりと笑顔を見せる希望に、咲耶は希望のどんな人とも仲良くなれる性格がうらやましく見えた。

そうこうしている間にどこからか京が一頭の馬を引いて戻ってきた。
「あいにく一頭しか見つからなかったがこれに乗った方が早くつける」
そう言って馬を咲耶達に渡した京で有ったが、どう扱って良いのか悩む咲耶達を見て・・・
「お前、馬に乗ったことが無いのか?」
そう言って京は、素早く馬にまたがると、咲耶の体を抱き寄せた。
「仕方ない!私が堺まで乗せてやる。乗れ!」
咲耶は何も言えず、ただ京の言うままになっていた。
そのあとに続き希望も飛び乗る。
「京ちゃんも一緒に行ってくれるんだぁ?」そう言ってうれしそうに笑った。
「お前?何度言ったら分かる!ちゃんは辞めろ!」
何故か照れた様な京の表情に咲耶は、自分が寝ている間に希望に手を焼いている京を想像して思わず笑いがこみ上げてきた。
「笑うな!行くぞ!」
照れた顔を隠すように京は二人を乗せて、馬を走らせた。

三人を載せた馬は一路堺へと疾走していた。



住吉大社で一日を過ごしたジュハ一行は、全く現れる気配の無い八家衆をあきらめ、先を急ぐことを決めていた。
「仕方有りません。予定より四日も過ぎても現れないのでは我々だけでも先を急ぐしか有りません。」
ジュハ一行のリーダーと思われる仏教国の僧侶が住吉大社の宮司に別れを告げ旅立ちの支度を始めた。
次なる目的地は、尾張。
尾張を拠点として探索をする計画を立て一行は旅立っていった。

一行は近道をするため伊賀の森を目指していた。
伊賀までは最たる難所もなく、順調な旅であった。
しかし一行は異国の地に何が待ち受けているのかをあまりにも知らなかった。
森の中を徐々に進む異国の集団。
深い森を突き進みながらも一行は異国の森に苦戦していた。
それも仕方がないことだろう。
彼らにとって森は初めて体験する事でもあり、ここに住む者でさえ思うようには進むことの出来ない、それ程深い森であった。
更にこの森には、別の危険も有ることを一行には想像さえ出来なかったのである。
やがて一行の周りを囲むように何者かの一団が、音も立てず気配さえも消して徐々に徐々に、その間合いを縮めていく。
森はどんどん深くそして薄暗くなっていく。
「なんか獣でも出そうな感じの森だなぁ?」
海の事ならなんでも分かるあまめではあるが、森の中ではどうすることも出来ない。
そんなあまめとは違いジュハは何かを感じていた。
「あまめ。気をつけて。何かが近づいてる。」
ジュハのその言葉に反応するかのように、一行は周囲の警戒をしながら一歩一歩先を進んでいく。


その頃、三人を載せた馬は必死に街道をひた走っていた。
馬に乗ること自体初めての咲耶と希望は必死に京の体をつかみただ成り行きに身を任せて居る。
京はさすがに慣れているのか、往来する人々を避け、まるで自分の体のように自在に操っている。
「大丈夫か!?腕の傷は?!」京の咲耶を心配するその声に咲耶はうなずく。
馬に振り落とされないようにするだけで精一杯だった。
どのくらい走っただろう。
あたりは暗くなり始めていた。
「おい!そろそろ堺だ!港へ行けばいいのか?」
すでにおちあう日は過ぎている事を知っている咲耶は一行が立ち寄りそうな所を考えていた。
『確か住吉大社の所在を親書に託していたはず・・』その事を思い出した咲耶は、京にその事を告げる。
「分かった!真っ直ぐそこへ向かう!」
そう言うと今にも倒れそうな馬にむち打ち住吉へと向かった。
「どうどう!!」京のそのかけ声と共に馬はその疲れた足を止めた。
「着いたぞ!」
その言葉に安心したのか、咲耶と希望はふーっとため息をついて馬を下りた。
今にも倒れそうな馬に咲耶は手を当て。
「ありがとうね。」と、優しくなでるのであった。
馬の蹄の音と、いななきを聞いて、住吉大社の宮司が外へ出てきた。
「どうなさいました?」
息も絶え絶えに咲耶は事の成り行きを話し始めた。
「それは難儀なことで。しかし異国の方々はもうすでに出立致しました。」
「やはりそうでしたか。」
「それで何処へ行くと言っておられましたか?」
そう言うと宮司は森の方を指さし、
「尾張を目指し伊賀の方へ向かいましたが。」
「それでは私たちも尾張を目指します。」
そう咲耶が言うと後ろに控えていた京が口を挟んだ。
「やめておけ。今からでは伊賀の森はぬけられん」
京の言葉に咲耶はあたりがすでに暮れかかっていることに初めて気がついた。
「そうですよ。今日はここで体を休め明日朝、出立なされてはいかがです。」
一日中何も食べていないことにも気づき、仕方なく宮司の申し出を受ける事にした。
『伊賀の森か・・・』
京は心の中でつぶやいていた。



深い森はいつしかジュハ一行を暗い闇の中へと連れて行く。
まだ夕刻だと言うのにこの森はすでに夜の様に暗くなっていた。
方向を失ったジュハ一行は、これ以上先へ進むのをあきらめ野宿を余儀なくされていた。
「どうしようも有りませんね。朝になれば少しは明るくなります。今日はこの辺で休みましょう。」
そう言うと一行は寝床に適した少し開けた場所に火をたき、そこで一夜を過ごすことにした。

周囲は森が作り出す暗闇で何も見えなくなっていた。
だが、その暗闇の中獣のように音も立てずにこの異国の一団を見守る者達が居た。

一行はそれぞれ四方に見張りを立て、焚き火を囲うように異国の森での疲れを取り始めた。
あたりは時々鳥のさえずりが聞こえるだけだった。
一行が眠りに誘われ始めたとき、一行を見守っていた集団が動き始めた。
少しずつ少しずつまるで獣が狩りをするかのように忍び寄る。
「うっ・・・」
見張りの者が声にならないうめきを立て暗闇へと消えていく。
又一人、又一人と同じように暗闇へと消えていく。
ジュハが何者かの気配に気がつき、目を開けた瞬間!

ジュハの体は宙に浮き次の瞬間ジュハは気を失っていた。
やがてあたりは何も無かったように暗闇に支配されていた。


翌朝、咲耶と希望は宮司に手渡された食料と道を記した地図を貰いジュハ一行が辿ったと思われる道を急ぎ足で歩き始めた。
「おい!」
咲耶達の後ろから住吉大社で分かれたはずの京の声がした。
「京ちゃん!」
二人は馬に乗り自分たちのあとを追って来た京を見て驚く。
「どうしたのですか?」
咲耶の問いに少し恥ずかしそうにいつもの口調で言い放つ。
「馬で行った方が早く着く。乗れ!」
そう言うと京は咲耶に手を差し出す。
「やっぱり京ちゃん一緒に行ってくれるんだぁ?」
そう言う希望の顔を見て、京は真っ赤な顔をして言った。
「何度言ったら分かる!ちゃんは辞めろ!今度言ったら殴るぞ!」
いつもの天真爛漫な希望の笑顔を見て場が悪そうに京は怒って見せた。
しかし当の希望はうれしそうにニコニコしているだけ。
そんな希望を後ろに載せ、三人を載せた馬が疲れた体にむち打ちながら伊賀の森へと疾走し始めた。

馬の足では伊賀の森もそれ程時間もかからず到着した。

「この先は馬では無理だ。これからは歩いて行くぞ。」
命令口調で話す京に咲耶は以前よりは信頼を寄せていた。
役目を果たした馬に別れを告げ、三人は深い森へと進み始めた。
いつも以上に怖い顔で進む京の顔を見て咲耶は気になった。
「どうしたのですか?何かこの森には有るのですか?」
そう言うと京は昨夜から聞いていた伊賀の森について話し始めた。
「この森には、昔から忍びと呼ばれる奴らが住んで居るんだ。
 奴らはこの森を自分の庭のように熟知し、獣の様に身を隠し行動する。
 ただの旅人なら決して襲ったりはしないが、怪しい者に対しては襲うこともある。」
それを聞いた希望が面白そうに聞く。
「ねぇ?それって人間なの?それとも獣?」
「お前は馬鹿か!獲物を選んで襲う獣が居るか!」
その言葉に、心の中でつぶやいていた。
『だったら私たちは確実に狙われるわね。京さんと一緒じゃ。』そう言うとクスッと笑った。
「何がおかしい?」
希望も咲耶が考えた事が分かったようで同じく笑い出した。
「お前らな?」
そう言った京は少し後悔していた。
ずっと一人で旅をしていた自分がどう見ても幼いこの二人にもて遊ばれて居る事に。
だがその反面、この二人の汚れを知らぬ純真な心に何かを感じていた。
『まぁ?良いか、行く当ての無い独り身だ。』そうつぶやく京は、自分が少しずつ変わっていくのを『悪くはない』と、思い始めていた。

三人は段々と薄暗くなる森の中をなおも進んでいく。

そんな三人を見守るように何者かがあとをつけ始めた。
京はその気配に気づき相手の出方を見るため知らぬ振りを続け歩き続けた。
更に気配は増えていく。まるで三人を見極めようとするかのように。
そんな京の様に咲耶も又何者かの気配を感じていた。
「どうやら私たちも狙われているようですね。」
「お前も感じていたのか。どうやら囲まれたようだ。」
「しかし私には彼らから邪気は感じられません。見張っているだけでは無いのですか?」
「だと、いいがな・・・」
そう言いながら三人は深い森をどんどん進んでいく。
先の方に少し開けた場所を見つけ三人はそこを目指した。
少し開けた場所に出た三人は人が着けたと思われる焚き火のあとを見つけた。
その焚き火のあとをなにやら探っていた京が咲耶に小声で話す。
「どうやらおまえ達が探していた奴らもここに居たようだな。まだ暖かい」
そう言って焚き火の枝を拾い京は何を思ったか茂みの中を目指し枝を投げつけた。
「グッ」
何者かのうめきが聞こえその瞬間三人の周りにいた何者かが動き始めた。
「貴様ら!伊賀の忍びか!?」
その京の声に反応したのか、何者かの動きが一瞬止まった。
「我々はこの森を守る者!」
そう言うと彼らの動きは素早さを増しあたりは一瞬にして三人を囲む黒い衣装に身を包む集団に囲まれていた。
一人の忍びが合図すると集団は森へと散り始める。
〈シュッ!〉
何かが飛んでくる音が聞こえたかと思うと、京が素早くそれを交わした。
それを合図に四方から同じように何かが飛んでくる。
〈シュッ!〉
〈シュッ!〉
京が身をかわし、時には枝で払いのけその攻撃を交わしている。
希望も《龍金闘》でそれをたたき落としている。
咲耶は必死にそれをよけるだけが精一杯だった。
それは手裏剣と言われる忍びが使う道具である。
殺傷力は弱いが確実に敵の動きを封じることが出来るこの森では有効な武器である。

手裏剣では京たちを捉えられないと悟った忍びたちは、素早い動きで木々に飛び移ると刀を抜き今度は斬りかかってくる。
その動きにも惑わされることなく、京と希望は相手の剣を交わし一撃を加える。
だが傷つけるつもりのない京と希望の攻撃に忍びの動きが変わった。
さっ!と茂みに身を隠したかと思えば、一人の忍びが静かにこちらへ向かってくる。
「どうやらあなた達は我々に敵意を持っていないようだ。」
その忍びに向かって咲耶が口を開いた。
「私たちは、尾張へ向かった仲間を追ってここまで来ました。あなた方に心当たりが 有るのでしたら教えていただけませんか?」
その咲耶の姿を見て、その忍びはおもむろに覆面をとり、話し始めた。
「昨晩この森に異国の者達が進入した。彼らはそなたたちの仲間だったのか?」
「はい。有る目的の為、堺で落ち合うはずがこちらの不備で先に尾張を目指したものと思われます。所在をご存じで有ればお教え願えませんでしょうか?」
丁重な物腰に一人の忍びは、自らの誤解を悟り、昨日の行動を話し始めた。
「彼らは我々の里に捉えております。どうやら我々の早とちりだったようですね」
そう言うと忍びは、周りを囲む仲間に合図した。
その合図を見て茂みからぞろぞろと同じように黒い衣装を着た忍びが現れた。
同じように覆面をとったその忍びたちは、以外と若い少年の様な者や、女も混じっていた。
「どうか訳も聞かずに襲ったこと、お許し下さい。」
忍びのリーダーと思われるその男が、自らの過ちを認め咲耶たちに謝罪した。
「しかし伊賀の忍びは、滅多に旅人を襲わぬと聞いていたが・・・」
京のその言葉に、その男は暗い顔を見せ語り始めた。
「今この森は他国と同じように何者かの攻撃を受けかなりの仲間が倒されています。
 その為に怪しい者は全て捉える事。それが我々が受けた指令です。」
「それでか。通りで若者が多いと思った。」
京はそう言うと刀を鞘へ納めた。
「捉えたと言われる異国の人たちに会わせて頂く訳には参りませんか?」
咲耶はその男に切り出した。
「分かりました。ご案内します。こちらへ」
そう言うと、リーダーと思われるその男は三人を伊賀の里と言われる森の奥へと全ての忍びと共に消えていった。



絵巻その三「友情?そして誤解」終わり。


絵巻その四「罠?そして魔の森」へ続く。

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