| ■『志音(SHION)』【小説】 |
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未だにそれほど売れてはいないが一応これでも小説家である。
今、私は久しぶりに出版社から新作の依頼を受けて執筆中であるが、中々思うようなストーリーが書けず悩んでいる。
そんな時、いつも私は気を紛らわすためにビール片手に小さい頃のアルバムを引っ張り出し、昔を懐かしんでいる。
何度も見開いては、時間の経つのを忘れ、幼い頃の思い出や昔遊んだあの時の事を思い出しては”今”と言う時間を忘れることがこんな時の対処法になっていた。
「おっ!この写真・・・・」
いつもは気にも止めなかった一枚の写真が私を幼かった頃の自分に戻していた。
「そう言えば最近墓参りに行って無いなぁ。おおばあちゃん怒ってるかな?」
その写真には幼い私、10歳くらいだったか、田舎の北海道・上ノ国へ行ったときに父が撮ってくれたおおばあちゃんとの最後の写真だった。
私は子供ながらにそのおおばあちゃんの名前がとても明治生まれとは思えない変わった名前だといつも思っていた。
『志音』と言うそのおおばあちゃんが、私はとても大好きで夏休みと冬休みには家族で上ノ国へ行くのがとても楽しみだったのを覚えている。
89歳と言うその当時では、結構、長寿を全うした明治生まれの優しい志音おおばあちゃんはこの写真を撮った1982年の夏を最後にこの世を去った。
その後も夏になると必ず、おおばあちゃんが眠る上ノ国へ行くのが習慣のようになっていた。
だが、私が大学を卒業後、東京の出版社に就職してからと言うもの、中々長期休暇もとれず毎年恒例の墓参りもおろそかになっていた。
私の実家は北海道は函館にある。
坂が多く昔と今が同居しているようなそんな町であるが、シーズンになると観光客がドッとなだれ込んでくる、夜景が綺麗と評判な『五稜郭』という観光名所がある古い町だ。
父が勤める新聞社が此処にあり、私はこの町で生まれた。
小さい頃から五稜郭公園を遊び場に育ち、高校卒業までこの町でゆったりとした時間の中で育った。
私の話はこの辺にしよう。
『志音』と言う名のおおばあちゃんの話に戻ろうと思う。
志音おおばあちゃんにとって私は曾孫にあたる。
小さい頃、私はおおばあちゃんにとても可愛がられた。
何故かと言うと私がおおばあちゃんの旦那、曾祖父の天馬おおじいさんの小さい時にそっくりなんだそうだ。
曾祖母と曾祖父は、幼なじみで兄弟のように育った為、天馬と言うこれも変わった名前の曾祖父の小さい頃をよく覚えているんだそうだ。
そんなこともあり、休みに必ず里帰りをする私たち家族をとても楽しみにしていてくれた。
私はそんなおおばあちゃんがとても大好きで、里帰りをするとおおばあちゃんの後を犬のようにくっついていた。
そして寝るときに決まっておおばあちゃんが色々な昔話や不思議な話を聞かせてくれるのがとても楽しみでも有った。
そんなことが影響したのか、私はいつしか小説家になることが夢になって、こうして何とか実現できた。
そんなおおばあちゃんが、この写真を撮ったその夏、志音おおばあちゃんの父と母の形見、龍を象った金のペンダントと青く輝く石がはまっているブローチ、そしておおばあちゃんが生まれた時に撮った一枚の写真を見せてくれた。
明治に撮ったはずのその写真は、色が抜けてはいるが紛れもないカラーの写真だった。
今考えるとどこで撮ったのかとても不思議だ。
その形見を見せながら、私に話して聞かせてくれた昔話はとても変わった不思議な話だった。
子供だった私は本当の話だと思って聞いていたが、今思えばまるでSF小説のような話だ。
おおばあちゃんが亡くなってからその話を思い出すことは無かったが、今になってその不思議な話を小説にしてみようと私はワープロに向かった、が、ふっとその形見を曾祖母が亡くなってから私が譲り受けていたことを思い出し、押入の中を2時間かけて探し回った。
やっとの思いで小さな木箱に入れたその形見を見つけ、何十年ぶりかで開いたその木箱にはあの時と変わらぬ光を放つ龍のペンダントと青い石のブローチ、そして色あせた一枚のカラー写真。
子供の頃には気がつかなかったが、曾祖母の母の形見と言われる青い石のペンダントの中に文字が刻まれている事に気がついた。
「S.U.G・・・・SPACE UNITED GUARDIANS.」
確かに英文字で書かれていたその文字はそう読めた。
私は改めてそのブローチの存在に驚き始めていた。
「そんな・・・」
明治の頃にそんな組織が有るはずもなく、ましてやその文字の意味する言葉自体その当時の人には思い浮かばないもので有るのは確かである。
「これって作り物かな?子供の自分を喜ばせようと思っておおばあちゃんがどこかで買って来たものなんじゃ・・」
そんな憎めないいたずらを良くするおおばあちゃんだったから、私はその想像に納得しかけた。
「えっ!?」
私は写真に写る曾祖母の母、百合香と言う名の女性の胸に同じブローチが写っていることに気がつき仰天した。
「うっ!嘘だろう・・・・」
何度見比べても同じものだった。
色あせては居たがその写真に写っているブローチと、今私の手に持つブローチはどう見ても同じものとしか思えなかった。
そのブローチをよく見ると、青い石の中にまるで大陸でも象ったかのような模様さえある。
その事実にぶちあたった私は、必死に一度だけ聞かせてくれたSFとも思える不思議な話を思い出していた。
そう・・・・その昔話はこんな不思議な物語だった・・・・・・・。
プロローグ「不思議な昔話」終わり。
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