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■『志音(SHION)』【小説】 
2005 12 06
Tue 18:01:10

オリジナル小説  Comment 0  Trackback 0  edit.

第二章「生存?それぞれの刻?」
シオン編01....
どのくらい時が過ぎたのだろうか?
暗い闇の中を彷徨い何かを探し続けている自分が何者なのか目覚めたばかりの彼には何一つ分からなかった。
ボーッとする意識の中、今自分は何をしているのか、自分はどこに居るのかそれ以上に自分が生きているのか、死んでいるのかさえ彼には理解できなかった。
かすかに感じる光の中で考えていた。
《どうしたんだろう?俺は何をして居るんだろう?》
「爺ちゃん!この人動いたよ!」
《誰だ?誰かの声が聞こえる・・・・》
何かを考えようとする意識を何かが阻むように遠のく意識の中、彼はあまりにも無防備だった。
《俺は・・・》
彼はまた深い眠りに意識を飲み込まれていく。

どのくらい寝ていたんだろう?
彼は暗闇から逃れるように深い意識の中から抜け出そうとしていた。
瞼に光が当たっているのか彼はまぶしさを感じながら重たい瞼を開こうとしたがまるで鉛のように重たく閉ざされたまま動かせなかった。
《俺はどうしたんだ?俺の体はどうなって居るんだ?》
彼は自分のものであるはずの体を動かそうとしたが、やはり動かなかった。
「あっ!とうさま!またこの人動いたよ。」
《またあの声だ。俺のすぐそばで誰かが・・・・》
「リン。静かに寝かせて置きなさい。」
「だって?!この人七刻も眠ったままだよ。」
「仕方なかろう。こんだけの怪我をしてるんじゃから。生きているのが不思議なくらいじゃ」
《怪我?俺の事か?》

彼は未だもやの中に居るような意識の中、自分に何が起きているのか必死に考えていた。

《俺は何でここに居るんだ?・・・・》

だが彼には答えを出すことは出来なかった、それよりもそんな意識の中、何か大切な物を探していたようなそんな思いだけがこみ上げてくるのを感じていた。

《なんだ・・・この気持ちは?俺は何か大切な物・・・いや、誰かを捜して居た様な・・》

こみ上げてくるこの思いは彼に耐えきれないほどの悲しさ、苦しいほどの切なさを与えていた。
耐えきれないほどの衝動が彼の瞳に涙をにじませる。

「この人泣いてる・・・痛くて泣いてるのかな?」
「いや、何か辛いことでも有ったんだろう。それを思って泣いてるのかもな。」

その言葉に彼の心はさらに深い悲しみに堕ちていった。

「大丈夫だよ。リンがここにいるからね。」

彼はその言葉に深い悲しみが薄れていくのを感じ声の方へゆっくりと瞼を開こうとする。
あれほど重たく感じていた瞼も今は自然と開いていく。
彼のぼやけた目の前に小さな女の子と年老いた男がにこやかに彼の顔をのぞき込んでいる。

「あっ!目が覚めた!爺ちゃん!目が覚めたよ!」
「おぉ!目が覚めたか!これでもう大丈夫じゃ!」
「あっぁぁ・・・」
「無理しちゃいかん!無理して話そうとしても今は無理じゃ、お前さんは大けがをしてここに運ばれたんじゃから。もう少しゆっくり眠った方がいい。」

彼は必死に声を出そうとしたが、思うように言葉にならなかった。

「心配せんでも良いぞ。ここはわしの家じゃ、なにも心配せんでゆっくり体を治したらええ。」
「そうだよ。リンも側に居てあげるから寂しくないよ。」

ぼやけた視界の中ににっこりと微笑むあどけないその笑顔に彼は安らぎを覚えゆっくりとまた深い眠りの中に堕ちていった。



「シオン!起きた?朝ご飯だよ!」

シオンは無邪気な声で彼の名前を呼ぶこの少女がまるで自分の母親にでもなったかのような錯覚を覚えていた。

「リン、大丈夫だよ、もう一人で・・・」
「なに言ってるの!シオンはまだケガ人なんだから一人じゃ無理でしょ!」

そう言うとリンはシオンの上半身を起こそうと一生懸命で、そんなリンを見てシオンは気持ちが軽くなっていくのを実感していた。

「リンにはかなわないなぁ?」
「これ!シオンが困ってるぞ。」
「良いの!シオンのお世話はリンのお仕事なんだから!」
「良いんですよ、リンとウナルベさんは命の恩人ですから。」
「爺さんで良いよ。わしも息子の様に呼び捨てにしておるんじゃから。」
「息子さんはどうしたんですか?見かけないようですが」
「あぁ・・・」
「とうさまは神様と一緒に天国で狩りに行って居るんだよ!」
「神様と・・・・」
「うん!ねっ!爺ちゃん!」
「あぁ、そうじゃな。」

そう言って無邪気に笑うリンの笑顔の側でウナルベは暗い顔を押し隠そうとしていた。

《そう言うことか・・・・・・》

意識を取り戻したシオンは、彼がザウと言う砂漠で何かの乗り物の中で倒れているのをこの家の老人、ウナルが通りがかりこの家に運んでくれ、ケガの手当をしてくれたことそしてこの地がガイラースと言う名で有ることを教えられた。
ウナルの話では時折、異国の服を着た旅人がこのガイラースにニッネカムィと言ういたずらな神様に連れてこられるという伝説があり、このガイラースに住む者はその人々の子孫だと言う。
さらにウナル達ウタリの一族の祖先は大和の北の大地に住む民族で大和の民に追われて神の穴を通ってこの地へ逃れて来たのだと、そしてウタリの言い伝えではこのガイラースは世界を旅する神の通り道なのだと話してくれた。
シオンには全く理解できなかったが、歴史で習った昔の日本が大和と呼ばれていた事と神の事をカムィと呼ぶ、アイヌ民族が日本の北に住んでいた事をうろ覚えながら覚えておりその民族の子孫ではないかと推測していた。
だがシオンが「今は何年ですか?」とウナルに聞いた時、ウナルには分からなかった。
このガイラースは刻が止まった世界であり、太陽も無く月も無い神の光に覆われその恵みでガイラースの人々は生きていけるのだと言う話だった。
シオンには太陽が無いなどと信じられないことだったが、夜もなく昼もなくただ夕暮れの様な明るさが一日中続いて居ることだけは、家の外から漏れてくる光をみて信じる以外に無かった。

やがてシオンは、リンやウナルの手厚い看護のお陰で起き上がれるだけの体力をつけ片足だが立てるまでに回復していた。
倒れていた時は息はしていたが今にも死にそうで体中を強く打ち付けた様な打撲がひどく昏睡状態が続いたのだそうだ。
シオンは「墜落のショックで打撲を負ったんだろう。」と考えていたが、たとえ最新のシャトルと言えど大気圏突入に耐えうるだけの性能は無い事もシオンには分かっていた。
理解に苦しむ事ばかりだが、今の自分にはそれを調べるだけの力も知識も無いことが一番辛かった。

やがてシオンは傷が癒え、一人でも出歩けるまでに回復したが、相変わらずリンが側を離れず、まるで「リンが居ないとシオンは何にも出来ないんだから!」と言いたそうに世話を焼いていた。
外へ出たシオンはウナルから聞いていたとおり、空には太陽が無く、一日中夕方の様に薄暗く夜も全く訪れる気配すら見あたらなかった。

《本当に太陽も月も無いんだな・・・これでは時間が止まって居るように思えるのも仕方がないかもしれない。だけどここは本当に地球じゃ無いのか?どう見ても地球の大地にしか思えない・・・・シャトルへ行けば何か分かるかもしれないが・・・》

「どうしたのシオン?どこか痛む?」

ふっと我に返るとリンが考え込んでいたシオンの顔を心配そうにのぞき込んでいた。

「いや、何でも無いよ。ちょっと考えて居ただけだよ。ごめん、心配かけて。」
「ならいいんだ!」

そう言ってまた無邪気な笑顔で微笑んでいる。そんなリンの笑顔をみてシオンは子供の頃、シオンの後を楽しそうに付いてくるユリカの姿を思い出していた。

《ユリカ・・・・・・・》

「シオン!また悲しいこと思い出しちゃったの?」
「あっ!ごめん何でも無いよ。」
「リンがずっと一緒に居てあげるから大丈夫!寂しく無いでしょう?」
「うん。寂しくないよ。リンが居てくれれば。」

シオンにはこのリンの笑顔が何よりの救いだった。

「あらっ!リンちゃん!シオンとお出かけかい!?」
「うん!シオンにお外を案内してるの!」
「へぇ?リンちゃんは偉いね?」
「シオンも大分良くなった様だね。良かった良かった。」
「みなさんのお陰です。」
「良いんだよ。助け合うのは当たり前のことさね。」

そう言ってしわくちゃな笑顔でキナと呼ばれる初老の女性が洗濯物を干しながら二人を見送っていた。

《この村の人たちは本当に親切な人たちばかりだな。やっぱり民族性なのか・・・》

シオンがこの村に担ぎ込まれてから色んな人たちがシオンの為に薬草や食べ物などを気軽に分けてくれていた。
よそ者のシオンを敬遠するどころか、自分たちの家族の一員でも有るかのように気さくに接してくれている。
そんな村人達をシオンは心から感謝と共に親密感さえ持っていた。

《いつか自分にも恩返しが出来れば・・・・・》

そう心で感謝するシオンはこの村で安らぎの時をそしてなによりもかけがえのない人々を得たような平穏な日々を過ごしていた。
そんなある日・・・・・・。

「ウナル爺さん、ケガも大分良くなったのでそろそろ自分が倒れていた所を調べて見ようと思うんだけど。」
「そうか・・・そうだな。あそこへ行けばシオンが探してる人の手がかりが見つかるかも知れんし。明日にでも行ってみるか。」
「わがまま言ってすいません。」
「なに?気にする事じゃない。いつかは・・・・・分かって居たことだし・・・」
「シオン!どっか行っちゃうの?やだよ?リン!」
「違うよ!ちょっと調べものするだけだよ。すぐに戻ってくるって!」
「ほんと?」
「あぁ、約束する!すぐに帰るって。」

泣きそうになるリンの顔を見てシオンははっきりとは言えなかった。
シャトルの状態によってはこの先どうなるのか分からないで居る自分が・・・・・

《リン、爺さんごめんよ。分かって居るんだけどこのままじゃ・・・・》

ウナルとシオンはじっと黙ったままだったが、お互い気持ちは分かり合っていた。
それ程までにシオンはこのウナルの家族の一員の様になりこの村の一人となっていたのだ。


翌朝、ウナルとシオンは軽く身支度を済ませ、ポロルと呼ばれるロバに良く似た小型の動物に荷台をくくりつけウナルは言葉少なに準備を整えている。

「少し遠出になるが、まぁ1刻も有れば着けるじゃろ。」
「ウナル爺さん、ちょっと変なこと聞いても良いかな?」
「なんじゃ、改まって。遠慮せんで何でも聞いたらええ。」

シオンは何となくは分かって居た事だが、科学者でもある自分がずっと不思議に思っていた事を少し恥ずかしそうに口に出した。

「ずっと不思議に思っていた事なんだけど、刻って言うのは一日と言うか・・・分かるんだけど、太陽も月も無いこのガイアースでどうやって時間を知るんだ?」
「そう言うことか。わしは太陽とか月は昔話でしか聞いたことは無いが、その長さがどのくらいなのかは話に聞いて知っておるよ。生き物は元々自然から時の長さを知るすべを持っておるお前さんだって腹が空けば食いたくも成るし疲れたら寝るじゃろ。その一回りが刻と言っておるだけじゃよ。」
「そうか。このガイアースにも動物も居れば植物も居る、その鳴き声や移り変わりで時を知るって事なんだ。」
「そうじゃ、生きとし生けるもの皆大地と共に生きて居る以上、自然と分かるようになる。」
「何となく分かった様な気がするよ。」

『同じ星に生まれた物で有れば、体内時計の働きも同じと言うことか。』
シオンは自分がいかに文明という物に毒されて来たのか知った様な気がしていた。

「ウナルじいさん、俺にも分かるように成るかな?」
「あぁ、お前さんも儂等と同じ星の子供じゃから分かるようになるさ。」

そう言ってウナル爺さんはしわくちゃな顔を綻ばせて笑っていた。

「じゃ、りん、ちょっと行って来るがその間家の事は任せたぞ。」
「うん、爺ちゃん達も気をつけてね。」

リンは明るく笑って見せたが、シオンには子供ながらに無理をして寂しい気持ちを押し隠して自分たちを送り出そうとしている事が痛いほど分かって居た。

「じゃ、行って来る。」
「うん・・・」

二人は後ろ髪を引かれる思いで一人見送るリンの姿を後にした。

『シオン、爺ちゃん、無事に帰ってくるよね・・・・』
リンにはこれが最後の別れの様な気がしていた。

ウナルとシオンは、ポロルに引かれた荷台に揺られ、ゆっくりとシオンが倒れていたザウの砂漠をめがけ無限とも思える広大なガイラースの大地を進んでいく。

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