スポンサーサイト 
-- -- --
-- --:--:--

スポンサー広告  Comment -  Trackback -  edit.

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

■『志音(SHION)』【小説】 
2005 12 06
Tue 18:02:34

オリジナル小説  Comment 0  Trackback 0  edit.

第二章  「生存?それぞれの刻?」
シオン編 Next 02....
「ウナル爺さん、爺さんは俺が倒れていた砂漠は良く通のかい?」
「あぁ、ザウの砂漠には薬になる薬草や小動物がいるからな。村で必要な時だけ取りに出かける事も有るんじゃ。」
「村にも畑が有ったけど、そこで栽培するとか動物を飼うとかした方が良いと俺には思うんだけど何故そうしないんだ?」
「確かに儂等の先祖もそう思ってやっては見たが、このガイラースの大地ではそこでしか育たないんじゃ、儂等はこのガイラースにはそれぞれの土地に住む精霊がおってその精霊の加護で生かされておると思っているんじゃよ。」
「精霊かぁ、俺には分からないけど、多分何かの力がそれぞれの大地を構成している物質の核になっていると・・・・爺さんには分からないかぁ。」
「難しい事はわからんが、言い伝えでは神がこのガイラースをお造りになった時はじめからその地に住む者達を決めており、その者達が暮らすために必要な物を精霊が与えてくれると言われておるよ。」
「じゃ、他の土地に行ったりはしないのか?」
「いや、それなりの交易は有るし、旅をしながら暮らす人々もちゃんとおる。だが何故か同じ祖先を持つ者は知らず知らずのうちに精霊に導かれそれぞれの土地に集まる様に成っておる。」
「爺さんはこのガイラースには色んな種族が暮らしていると言っていたが、多くの種族が居れば戦いも有るんだろうな。」
「あぁ、儂等が住むウタリの村はガイラースでも田舎じゃから、大きな戦いは起きないがこのガイラースには戦いが絶えないと良く聞くよ。こんな世界に住むんじゃから少しでも良い暮らしをしたいと言うのは分かるがそれが異種族で有るが為に、激しい戦が絶えないらしい。愚かなものじゃて。」

シオンはウナルの話がまるで空想の様に実感がもてなかった。
何故なら、確かに空は一日中夕暮れの様に薄暗く太陽も月も無いが、大地はそれ程自分が良く知る地球と変わらないしウナルの様な人々は地球にも居た。
自然と共に暮らすと言う意味ではシオンが知るその人達よりもずっと人間らしく暮らしている様にしか思えなかったのである。

「実はな、儂の息子夫婦も戦に敗れこの地に逃れてきた者達がウタリの村を襲ったとき戦いに巻き込まれて死んだんじゃ。元々儂等ウタリは戦いを好まんし人を殺める事を何より嫌ってこの地に住み着いた様なもんじゃから、たった3人の荒くれ者に村の若い者が何人も殺されたんじゃ。たとえどんな相手でも武器を持たねば命までは取られんかったものを・・・・」

ウナルは淡々と話して聞かせてくれていたが、その目にうっすらと涙が浮かんでいる様にシオンには思えた。

「シオン、少し休んだ方がええ。まだまだ先は長いからの。それに怪我が治ったと言っても傷が癒えたばかりの体力では少しきつい道行きじゃからの。」
「あぁ、そうさせてもらうよ。」

そう言ってシオンは藁を敷き詰めた荷台と言っても少々体に応える振動を我慢しながらも怪我の後遺症かまだ重く感じる体を横にして浅い眠りについた。

どのくらい眠っていたのか分からないがシオンは体の痛さに絶えかねて起きあがった。

「起きたか。よく眠っておったようじゃが。」

そう言って笑うウナルにシオンは痛む体をさすりながら苦笑いをしていた。

「どのくらい眠っていたんだ?」
「六目くらいかの。そろそろザウの砂漠が見える頃じゃよ。」
「そんなに眠っていたのか・・・・」
「着くまで寝かせておこうと思ったがどうやらシオンには荷台で寝るのはあわん様じゃな。」

確かにシオンは自分にはこういった乗り物は合わないと正直思っていた。
宇宙船やステーションで生きてきた自分にとってあまりにも原始的な乗り物であり体がガイラースに住むにはあまりにも非力な事を思い知らされていた。

「おっ、ザウの砂漠が見えるぞ。あれがザウの砂漠じゃ。」

ウナルが指さす方を見ると、そこには赤っぽい砂だけが広がっている大地がシオンの目に写ってきた。

「あれがザウの砂漠か、自分が思っていた砂漠より意外となだらかな荒野にみえるが・・・」
「確かにザウは砂漠と言うより荒野に近い。だから草も所々に生えておるし動物も暮らしている元々ザウとは、”生きている”と言う意味じゃからな。」
「ガイラースの砂漠はみんなこんな感じなのか?」
「いや、雨が全く降らない砂漠も有るし、大地の熱で灼熱と化している砂漠も有ると旅人から聞いておるよ。ガイラースでは大地の熱がその土地の気候を左右して居るんじゃ。」
「それも精霊が?」
「そう言う事じゃな。」

顔を見合わせて笑う、まるで親子のような二人を乗せた荷台は、ゆっくりとザウの砂漠を進んでいく。
やがて彼らの視界に小高く盛り上がった砂の山に白っぽい金属の様な物が埋まっているのが遠目に見えてきた。

「あれが・・・・・」
「そうじゃ。あそこでお前さんを見つけたんじゃよ。」

シオンは荷台の中で黙ってシャトルが埋まっている小高い砂山を見つめていた。
『どうやらコンテナやエンジン部分は無くなっているようだ。エネルギーサンプルの爆発か何かで吹き飛んだと言うことなのか・・・・』
砂山に到着するとシオンはすかさず荷台から降りてシャトルに覆いかかる砂を除け始めた。

「時間がかかりそうだから儂はしばらくその辺の薬草でも採ってくるよ。半刻ほどで戻って来るからの。」
「ありがとう。爺さん。」

ウナルは疲れた様子もなく又ゆっくりと砂山を後にした。

「それにしても良くこの状態で着陸出来たものだな。砂とは言え大気圏突入ならほとんど焼けこげてひとたまりも無いはずだが・・・・」

シオンがシャトルに覆い被さる砂を除けると、焼けこげた気配すら無いシャトルの先端部分がそこには有った。
だが後部を覗くと操縦室のドアから後部がまるで刃物で切ったような外壁と内壁の断面を露わになった。

「この断面を見ると切り取られたと言うより無くなったとしか思えないほど傷も無ければ熔けた形跡もない・・・・やっぱりあの時の空間の歪みが原因なのか・・・・」

シオンは科学者らしく周囲をこまめにチェックしていた。
工学的な知識を専門としているからこそ導かれる答えだが、どうしても説明が付かないものもある。
シオンがシャトルが滑走したと思われる砂の後を調べると5メートルほどの削られた後が残っては居たが、たとえ操縦席だけとは言えこれだけの質量を持つシャトルが5メートルと言うあまりにも短い滑走だけで止まるだろうか?それが不思議でしようが無かった。

『風や砂嵐で消えたようにも見えない・・・・あの時の速度は確か時速2000キロ以上は有ったはず、それだけの速度で墜落すれば粉々に成るのが普通だが・・・・・
 どうやらこのガイラースが有る空間は通常の空間では無いと言うことか・・・・・・』

いくら考えても答えが見つからず、シオンは半開きに成っている操縦席の扉から中へと入っていく。
操縦席の窓からかすかに光が入っているがそれでも薄暗くシオンの目がその明るさに慣れるにはしばらくの時間がかかった。
明るさに慣れてきたシオンの目に映る操縦席は、確かに有る程度の衝撃で散乱しているがそれ程破損した様子もなく、最後に覚えている操縦席の状態とあまり変わっては居なかった。

『確かウナル爺さんの話では、扉のすぐ近くで俺は気を失っていたと聞いたが・・・』

倒れていたと思われるその場所にはシオンが付けていたトレーサーが落ちていた。

『ひょっとしてトレーサーに何か情報でも残っているかもしれない・・・・』

シオンはトレーサーの破損状況を調べたが別段異常は見あたらない。
トレーサーを装着しスイッチを入れるとシオンはトレーサーのシステムチェックとデーターの検索を始める。

「サーチ。地球周回軌道突入時からシステム停止までのデータをグラフ表示。」

トレーサーはシオンの声に反応し蓄えられているデーターを表示し始めた。

『北緯41度46分、東経140度40分・・・これが最終データか。北海道の函館の上空でトレーサーが止まったと言うことに成るな。しかしその時の速度は2754キロ・・待てよその時点でのセンサー数値が急激に上昇しているのはやはりサンプルの影響か・・・』
「サーチ。現在ののユリカ・セツナ及びレイ・ナゼルの座標及び身体データを表示。」
《同時刻、同座標時より一切のデータ送受信なし。トレーサーの故障または装着員によるシステム停止と判断します。その時点での身体データーは緊急回避を要請する音声データが残って居ます。》
『どうやらあの時を最後に違う空間に飛ばされたか、二人は消滅した・・・・・・』

シオンは二人の消息を完全に失った事に落胆する気持ちをグッと押さえ込み尚も検索を続けた。

「推測。最終データ時のセンサー数値で判断しシャトルの状況を判断せよ。」
《センサーの数値から予想される状況は後部シャトル並びにエネルギーサンプル用コンテナの消失、並びにその原因については推測不能と判断します。》
「爆発による消失とは考えられないか?」
《爆発による消失のデータパターンとは、明らかに相違が見受けられます。現在残るデータからはこの原因について推測は不可能です。メインコンピュータでも不能と判断されました。》
「なに!?メインが生きているのか?」
《バックアップシステムが作動していますが、パワー残量が10パーセントを下回っていますのでトレーサーからのアクセスのみメインからのデータを利用できます。》
「分かった。それでは引き続きサーチ。今現在このシャトルに残る装備の状況を表示。」
《検索中・・・・・》
《現在使用可能な装備は、携帯用医療パック3,緊急用サテライトポッド1,マルチ機動ユニット、クロム及びブルーム、船外作業用パイロットスーツ3以上が現在使用可能な装備です。但しマルチ機動ユニット・クロムは船外作業中の衝撃で機能の50パーセントダウン、ブルームは、システムがダウンしている為、再起動の必要が有ります。復旧修理が可能な装備は現在メインコンピュータがパワー不足の為検索出来ません。》
「了解した。」
『ブルームが無事だっただけでも俺には助かるな。しかしエネルギーの補充が出来なければ装備が残っていても使えないと言うことか・・・・』
「推測。現在利用可能なエネルギー補充法を推測。」
《推測中・・・・緊急用サテライトポッドの太陽電池パネルによる補充が考えられますがその為にはエネルギー充填用の受信アンテナを必要とします。その他の方法はデータ不足の為、推測不能です。》
「そうか・・・・ではブルームの再起動は出来るか?」
《再起動には、現在残っているエネルギーの95パーセントを使用する事に成りメインコンピュータを一時停止する必要が有りますが構いませんか?》
「あぁ、再起動後メインはバックアップを取り停止してくれ。」
《了解しました。それではマルチ機動ユニット・ブルームの再起動を開始します。》

すぐにトレーサーからメインコンピュータへの指令でブルームの再起動作業が始まった。

《ブーーン・・・・》
《再起動終了。メインコンピュータを一時停止します。》

「了解。ではブルームに指令。シャトルの残骸及び部品を使いサテライトポッドからのエネルギー受信用アンテナの制作を開始。終了後クロムを収容し補修修理を開始。」
《了解しました。》

そう言うとブルームは、シャトルに残る部品を流用して受信アンテナの制作に入った。

『これで何とかなりそうだな。メインコンピュータさえ復活できれば、シャトル自体の修復の可能性もある・・・・それじゃこのガイラースの情報を集めるか。』
「トレーサー、サテライトポッド放出後、周囲の状況並びにトレースを開始。」
《了解しました。サテライトポッドを発射します。》

シオンの指示に従いサテライトポッドがガイラースの上空めがけ発射された。

《只今、サテライトポッド上空500km迄上昇、2000km到達度データのトレースを開始します。》
ポッドは徐々にブースターの力で2000km上空を目指し上昇していく。
しぱらくして2000メートル上空に達したポッドは太陽電池パネルを展開しデータを集めだした。

『しまった!』シオンはポッドが宇宙空間用であり空中ではブースターの燃料がそれ程の時間、空中に止まっていられない事に気がつき舌打ちした。

「トレーサー!ポッドの燃料はどうなっている?」
《ポッドの燃料残量は0です。しかしこの地域の上空には重力の影響が無く一定座標に固定されて居ます。》
「そうか!良かった・・・・・」
『どうやらガイラースの謎が掴めそうだ。幸運というべきか・・・・』
自分の失態で大事な情報源と成るポッドを失ったかと思ったがガイラースの自然に助けられたとシオンは思っていた。

《サテライトポッドからデータ受信。現在ポッドは2000kmの上空に位置し、大気及び重力を関知できず。尚地上を捉えたカメラからの映像を受信中。この惑星の外周部をセンサーで探索した結果、現在シャトルが着陸している大地は直径1850kmの円球に大気が組成され、その中に平面上の地殻が存在。尚大気の形成に及ぼしているエネルギー反応は関知されません。1850km以上上空では、大気並びに気体物質は無く宇宙空間と酷似している模様。さらにポッドが制止する座標からは恒星、惑星の観測は不能。外部並びに地殻からの電波は受信されず。但し電離層が検出された為、エネルギーの補充は電離層から直接補充が可能現在、ポッドの静電反応からエネルギーの採取を開始。》

「やはりこのガイラースは特殊な空間に存在していると言うことか。」
《ガイラース・・・ガイラースとはこの惑星の事ですか?》
「あぁ、そうらしい」
《ガイラースと言う地名及び惑星はデータには存在しませんが。》
「分かって居る。ここは未知の空間だ、データに無くて当然だ。」
《理解不能ですが、データの採取を続行します。》
「ポッドから送られてきたガイラースの映像を見せてくれ。」
《了解しました。3次元処理を行った映像を表示します。》

トレーサーが映し出したガイラースの3次元映像はまるで球体の中に浮かぶ浮遊大陸の様に写っていた。

「これがガイラースか、まるで空中に浮かぶシャボン玉の様だな・・・・・・そう言えばそろそろウナル爺さんが戻って来る頃だな。」
「プログラム。最優先事項。クロム及びブルームの修復後、エネルギーの補充並びにシャトルのシステム復旧を指示。」
《プログラム設定。クロム及びブルームによるシステム復旧とエネルギー確保を最優先事項とします。尚プログラム完了まで893日を要します。》
「2年半かぁ、かなりの時間自力で生きなければ成らないと言う事か了解した。」

シオンはトレーサーからの回答を聞き携帯用医療パックとトレーサーを持ちシャトルを後にした。

しばらくして約束の時間通りにウナルが薬草を積んで戻ってきた。

「シオン、もう用事は済んだのか?」
「あぁ、とりあえずここはもう良いよ。リンが心配するといけないからそろそろ村へ帰ろう。」
「そうじゃな。村へ帰るとするか。」

ウナルはシオンが村へ帰ると言ってくれた事をうれしそうに笑った。
『しばらくの間、あの村でみんなと一緒に暮らすのも悪く無いなぁ。』
シオンは優しい人々が待つウタリの村が何故か恋しく感じていた。


Next Page03........

ジャンル [ 小説・文学 テーマ [ 連載小説 ]

Re comments.

Comment form.

  管理者にだけ表示を許可する 
  注意 名前、タイトル、本文を入力する事で投稿可能になります。

Trackbacks.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。