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■『志音(SHION)』【小説】 
2005 12 06
Tue 18:06:35

オリジナル小説  Comment 0  Trackback 0  edit.

第二章「生存?それぞれの刻」
ユリカ編 Next01.....

もうここは4月だと言うのに、まるで冬に戻った様な寒さと舞い散る雪の中、兵舎を巡回する警備兵は寒さを堪えながら任務を続けている。

「何で4月だって言うのに雪なんて降るんだよ。うぅ?寒い?早く交代の時間にならないかな。」

警備兵は一人でこの寒空の中を巡回する任務にあまりの寒さでぼやき始めた。

「そういやぁ?あいつら今頃、街で飲んだくれているんだろうなぁ?俺も一杯ひっかけたいよ。」

同じ兵舎務めの同僚の話を思い出し益々ぼやきが増してきていた。
そこへ馬に乗った一人の男が兵舎へと近づいてくる。

「何だよ?こんな時間に・・・」

不思議そうに暗闇の中をこちらに向かってくる馬上の男の顔を見た警備兵は慌てて男に向かって敬礼をしていた。

「龍崎少尉殿!このような夜更けにご苦労様であります!」
「そう言う君こそ、この寒空、難儀だな。」
「いえ!任務でありますから。」
「まぁこんな日くらい酒でも飲ませてやりたいがそうもいかんな。」
「お心使い心より感謝いたします。それにしても少尉殿こそこの夜更けにどうなさったので有りますか?」
「いや、明日部隊長に提出する報告書を部屋に忘れたんでな。それに季節はずれの雪の中をこうして馬で散歩もたまには良いかなと思ってな。」
「風流で有りますな。」
「風流かぁ、本当は馬鹿なことだと思っているんじゃないのか?」
「いいえ!決してそんな事は思ってはおりません!少尉は我々の憧れでも有りますから。」
「そうか。それなら良いが。では入るぞ。」
「はっ!」

警備兵の敬礼を受け少尉は兵舎の中へと入っていった。

「やっぱり格好いいよな。俺も少尉の様に騎兵隊に入ればよかったかな?」

夜の兵舎はぽつんと一つ、ガス灯が点り少尉が乗る馬の蹄の音だけが周囲に木霊していた。
兵舎と言ってもここには大部隊は駐屯していない。兵器庫が何棟か並んでおり小さな兵舎が一つ有るだけだった。

やがて報告書を取りに来ていた少尉は報告書と一冊の本を片手に門の方へ戻ってくる。

「ご用はお済みですか?少尉殿。」
「あぁ、済んだよ。では私は宿舎に帰るが明日、私は部隊長の所へ行かねばならんから留守を頼んだぞ。」
「はっ!ではお気をつけて!」
「ありがとう。君も風邪をひかんようにな。」
「ありがとうございます。」

敬礼をする警備兵を後に少尉はゆっくりと雪の中を歩き始めた。

「それにしても良く降るな。この分じゃかなり積もりそうだ。まぁ真っ白な五稜郭も風流か。」

馬の白い息が夜の雪明かりに浮かびまるで絵から飛び出してきた様な馬上の少尉だった。

静まりかえった五稜郭を進む少尉の前方に突然、柔らかい光が白い雪を照らして降りてくる。

「なんだ?あの光は?」

不思議そうに見つめていたがおもむろにその光が舞い降りた所へ馬を進める少尉の目に光に包まれ倒れている人影が見えてきた。

「誰だ?」

その人影は少尉の呼びかけに答える気配はない。
側に寄って馬を下りた少尉は、その人影へと進んでいく。するとそこには見たこともない服を着た少女が倒れている。

「おい!大丈夫か?」

駆け寄りその少女を抱きかかえる少尉は、少女が息をしているのを確認すると頬を軽く叩き声をかけるが気絶しているのか目を開ける気配が無い。

「おい!大丈夫か?どうしたんだ?」

何度か呼びかけていると気を失っていた少女はゆっくりと目を開け何かを呟いている。

「レイ・・・・兄さん・・・・」

そう呟くと少女はまたぐったりと少尉の腕の中で気を失ってしまった。

「このままにして置く訳にもいかん。ひとまず宿舎へ連れて行くか。」

少尉は少女を馬に乗せ自分が寝泊まりしている宿舎へと馬を走らせた。
宿舎へ戻ってきた少尉は人を呼んだが誰の返事もない。

「そうか。明日は久しぶりの休みだから皆、出払っているのか。」

少尉は仕方なしに少女を自分の部屋へと連れて行き自分の布団に寝かせると消してあった
ストーブに薪を入れ火を着けた。

「どうやら日本人の様だが、この様な材質の服は見たことがない・・・
 それにしてもどうしてあそこに倒れていたんだ?あの光に当たって倒れたのか?」

少女の額に手を当て熱を見るが、熱は無い。

「どうやら気を失っているだけ見たいだな。それに怪我もないしその内目が覚めるかもしれない少し寝かせておくか。」

少尉は毛布を一枚引っ張り出すと、壁に寄りかかり自分も眠りについた。


やがて朝が眩しい日の光が周囲を照らし始めた。
降り続いていた雪はいつのまにか止み、明るい春の日差しが宿舎の窓からこぼれ始めてくる。

「うっ、」

窓からこぼれる朝日で少女は気が付いたらしい。

「ここは・・・?」

その声が聞こえたのか壁により掛かり眠っていた少尉が目覚め少女の元へと体を寄せた。

「おい。気分はどうだ?どこか痛むところは無いか?」

見知らぬ顔の少尉を見て少女は一瞬身をすくめたが、優しそうな顔でのぞき込む少尉に安心感を覚え言葉を続けた。

「ここは?一体私はどうしたんですか?」
「安心しろ。ここは函館歩兵分隊の寄宿舎だ。君は昨晩、五稜郭で倒れていたんだ。たまたま通りがかった私がここまで運んできた。」
「はこだて・・・・ほへいぶんたい?にほん?」

少女には理解できない地名だった。

「そうだ。ここは日本陸軍函館歩兵分隊の寄宿舎、そして俺は五稜郭兵舎に勤務している龍崎志乃助。君の名前は?どこから来た?」
「私の名前は・・・・ユリカ。どこから?・・・・思い出せない・・・・」
「良いんだ。昨晩の光のせいで一時的に記憶をなくしているんだろう。ゆっくりしていればその内思い出すよ。」
「昨晩の光?って?」
「そうか、覚えていないのか・・・
 昨日の夜、10時頃だったか空から光の玉が落ちてきて、たまたま目撃した私がその場所へ行くと君が倒れていたんだ。その光が原因で気を失ったんだろう。外傷はないようだが・・どこか痛むところは有るか?」
「光・・・いいえ。どこも痛むところは有りません。ただ頭の中が霧がかかったようで何も思い出せ無いんです。」
「でも自分の名前は覚えていたようだな。」
「名前・・・ユリカ・・・そう呼ばれていた様な気がして・・・」
「そう言えば、昨日私が見つけた時に、レイとかシオンとか口走っていたが・・・・」
「レイ・・・?シオン・・・??・・何故か懐かしいような・・・・」
「無理しなくても良い。しばらく横になっていれば思い出すかも知れない。」
「でも・・・」
「そうだ!私は任務で出かけなければならないから、賄いのときさんに頼んでおくから食事でもとって少し眠った方が良い。私は夕方には戻るからそしたら又話をしよう。」

少尉はそう言って笑顔を見せると、部屋を出ていった。
一人残されたユリカと名乗った少女は、霧がかかった様な記憶の糸を辿るように考えていた。

「私は一体・・・・どうしたんだろう?」

やがて少女の意識は深い霧の中へと沈んでいった。



Next02..........。

ジャンル [ 小説・文学 テーマ [ 連載小説 ]

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